科学的介護は、これまでの情報を蓄積し、事実に基づいた科学的根拠(エビデンス)や情報を、利用者に提供することをいいます。科学的介護の目的は、要介護者の重度化防止や、自立支援にあります。まず、医療現場であれば、患者の具体的なデータを集めた上で治療効果を検証し、それを元に治療を行うため、治療効果のばらつきがなく、思った通りの結果が期待できます。しかし、介護の現場では、経験や感覚でのケアになり、根拠もないまま介護のサービスを行うことで、重度化させてしまう危険もあります。この状態では、介護のサービスが十分だといえません。しかし、医療弁場のような科学的根拠に基づいたサービスができれば、重症化のリスクも抑えられます。

また、効果が認められた科学的介護は、経験の浅いスタッフでも質の高いサービスを提供することができます。利用者側も、数多く存在する介護サービスの中から、自分に合ったサービスを選択しなくてはならず、事業所によって違ったメリット・デメリットがあり、事業所側だけの主観的な意見だけでは信憑性に欠けていました。更に、科学的な根拠がなければ、サービス自体の効果やリスクなどの情報がない状態であり、利用者側にとっては、効果やリスクなどがわかりにくい現状でした。しかし、科学的介護の導入で利用者は何が自分に適しているか、どんなケアが必要であるかを基準にし、選択できることが期待できます。また、客観的に基づいた根拠や情報を集め、科学的根拠の元でサービスが選べるのは利用者にとって安心感へと繋がります。このような目的をもって、厚生労働省は科学的介護を推奨しています。